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恐れを取り除く言葉を



そこで、イエスは言われた。「剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる。」

──マタイによる福音書26章52節

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授業でアンケートを取ると、このような質問が投げかけられました。「誰もが戦争を望んでいないのに、世界中から戦争がなくならないのは何故ですか」という質問でした。

世界中で戦争が起こる原因は様々な要因が重なって起きているものだと思いますが、その大本をたどれば、そこにはいつでも「恐れる気持ち」があるのではないか、と思っています。
誰かが誰かを傷つけようとするとき、様々な恐れからそのような暴力が生まれることが多いからです。

相手が自分の脅威になるかもしれない、自分の大事なものが奪われるかもしれない。だから先に相手を排除しておきたいという恐れや、自分が周りから見放されてしまうのではないか、という恐れもあるかもしれません。たとえ暴力という否定的な手段だったとしても、人目を引くために悪いことに手を染めてしまうのです。
しかし、そのような方法で自分を守ろうとしても、結局は自分自身がいっそう傷つけられてしまったり、結局誰からも見放されてしまうことにもなりかねない、そうして暴力はどんどんと繰り返されていくのです。

聖書の舞台であるパレスチナの土地は、聖書の時代から争いの絶えない地域です。今もなお紛争が続いています。そのようななかで、ある牧師が「ガラスの天使」のステンドグラスを作った話をいつも思い出します。
戦争への抵抗運動のために、人々は戦車に向かって石やガラスを投げていました。ある牧師はそこで、投げられて粉々になったガラスの破片を使って、ステンドグラスの天使を作り、それを人々に渡すという活動をしていました。
小さなガラスであっても、割ってとがらせれば、人を傷つけることができます。暴力に暴力をもって、返していくことができる。しかしその牧師は、その割れたガラスを、天使のステンドグラスという平和を願う祈りに代えていったのです。

イエスを十字架にかけようとしていた人々もまた、自分たちの地位が脅かされるかのような不安と恐れをイエスに感じていました。
しかしイエスはそのような彼らに言うのです。あなたがたは自分で自分を滅ぼそうとしているに過ぎないのだ、と。このような姿を通して、私たちは争いの原因をいつも周りの人々に見つけようとしていないかということを思わされます。
イエスが私たちに勧めているのは、まず私たち自身が争いを引き起こす恐れを抱えていないかを振り返ることです。そして誰かがその恐れの中にあるときには、天使のステンドグラスを手渡していったあの牧師のように、私たちが誰かのために、平和を祈ることなのです。

もしあなたが、誰かのために、「大丈夫だよ、あなたは一人じゃないよ」と伝えることができたなら。「私が一緒にいるよ」と伝えられるなら。
その言葉は、きっと誰かの心の恐れを取り除くことができる。誰かを傷つける剣を取る人が、一人減るかもしれない。

そのために、イエス・キリストは最後まで、自ら剣を取らない姿を、私たちに示してくださったのです。今日の聖書の箇所を私たちも心に留めながら、自らの不安によって誰かを傷つけることがないようにと自分を戒めながら、毎日を過ごしていきたいと思います。