サウロは数日の間、ダマスコの弟子たちと一緒にいて、すぐあちこちの会堂で、「この人こそ神の子である」と、イエスのことを宣べ伝えた。
──使徒言行録9:19b-20
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私たちは自分の人生を自分で選択し、自分でその道を歩むことができる、と思うかもしれません。
しかし、私たちの人生は時に、私たちが思いもよらない方向へと向かっていくことがあります。
そのようにして人生が変えられた人の一人に、サミュエル・フィンレイ・モールスという人がいます。
モールス信号を開発した、あのモールスです。
モールスは元々、キリスト教(カルヴァン派)の牧師の息子でした。大人になってからは旅をしながら風景を描く画家として生計を立て、植民地時代のアメリカで細々と暮らしていました。
しかしあるとき、離れたところに住んでいる妻が危篤だという知らせを、早馬に乗ったメッセンジャーから受け取りました。
モールスは急いで妻の許へと向かいましたが、その最期に間に合わなかったのです。
こうしてモールスは、遠距離でもすぐに知らせを受け取ることのできる方法を模索し始めたと言います。
ある時モールスは電磁気学に詳しいジャクソンという学者に出会い、電磁石というものを知ります。
これを使うことで、彼は1832年、電磁石の磁気を信号にする、電信というアイデアを思いつきました。
そして後年、モールス信号と言う実用的な電報システムを開発することに成功したのです。
キリスト教が世界宗教の一つとなるために大きな働きをしたイエスの弟子に、パウロと言う人がいます。
このパウロは元々サウロと言う名前のユダヤ教の指導者で、キリスト教を信じている人々を熱心に迫害し、殺して回る人でした。
けれどもある時サウロはダマスコへと迫害に向かう途中、突然目が見えなくなり、イエス・キリストの声を聞くのです。
三日三晩、彼は何も食べず、誰とも話さずにいました。イエスの弟子が彼の目に手をかざすと、目からうろこのようなものが落ち、それから彼はキリスト教を信じる熱心なクリスチャンへと変えられたという物語が、今日お読みした聖句の箇所なのです。
モールスが、初めて電報を成功させたときに送った言葉をご存じでしょうか。
それは、「神のなされた業(What hath God wrought)」という言葉でした。
モールス信号と電報という技術は、妻の最期に立ち会うことのできなかった彼を無念から救い出すものでもあったことでしょう。
画家であった彼が不思議な出会いによって、今や誰もが知る通信技術の生みの親になりました。
人生を大きく変えられ、また無念からも救われた彼はそれを「神の働きだ」と表現したのです。
パウロも同じです。神様の働きによって、人生の大転換が起きた人でした。
キリストを迫害し殺そうとする者から、喜んですべての人にキリストを伝える人へと変わっていきました。
私たちの人生には何が起こるかわかりません。
私たちが何かに向かって突き進んでいく時、それが突然変えられることがあります。あるいは大きな挫折や悲しみを抱える時もあります。
しかしきっとそこには大きな神様の働きがある。
今あなたの人生が変えられる瞬間なのだというメッセージがそこにあるのだ、と受け取ってほしいのです。
神様は私たちの人生を、一人一人にとって一番良い道に導こうとしてくださっている。
そのことを信じることが、きっとどのような時にもあなたを励まし、支え、次の一歩を切り開くための勇気を与えてくれるものになるはずです。
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